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NO.535
かうして夜の明けるまで 昨日の悔いの一つ一つを撃ち殺して 時間のやうに明日へ走るのさ 【未来へ】
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NO.536
幾時代かがありまして 今宵此処での一と緋と殷盛り(ひとさかり) 【サーカス】
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NO.537
ぼむ ぼむ ぼむ ぼうむ ねむくなった星が 水気をはらんで下りてくる 【青い夜道】
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NO.538
太陽は美しく輝き あるひは 太陽の美しく輝くことを希ひ 【わびひとに与ふる哀歌】
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NO.539
ささやかな地異はそのかたみに灰を降らしたこの村にひとしきり 【はじめてのものに】
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NO.540
行行子(よしきり)は鳴く。行行子の舌にも春の光 【富士山】
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NO.541
おちこんでゆくこの速さはなにごとだ。なんのあやまちだ。 【落下傘】
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NO.542
君らの国の河はさむい冬に凍る 君らの叛逆する心はわかれの一瞬に凍る 【雨の降る品川駅】
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NO.543
彼女は第三コーナーでぽとりと倒れた。落下。 【椿】
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NO.544
僕は白い雲の中歩いてくる 一枚の距離の端まで 【飛込】
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NO.545
少年は小川でドルフィンを捉えて笑った。【太陽】
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NO.546
幼きは幼きどちのものがたり葡萄のかげに月かたぶきぬ 【思草】
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NO.547
河音の、さやさやさゆる、月の夜に、琵琶とりし子は、ありやあらずや。 【天地玄黄】
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NO.548
瓶にさす藤の花ぶさーふさはかさねし書の上に垂れたりー【竹の里歌】
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NO.549
髪ご尺ときなば水にやはらかき少女ごゝろは秘めて放たじ 【みだれ髪】
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NO.550
釣床やハイネに結ぶよき夢を小さき葉守の神よのぞくな 【『銀鈴』】
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NO.551
花蘇吉花ちるころは天平の人におもかげに立てよとぞ思ふ【『わがおもひ』】
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NO.552
接吻くるわれらがまへ涯もなう海ひらけたり岬よいづこに 【『海の声』】
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NO.553
別るゝ日君が涙のなど熱くわが路かくは寂しく見ゆる 【『まひる野』】
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NO.554
君ねむるあはれ女の魂のなげいだされしうつくしさかな【『収穫』】
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NO.555
米あらふ白きにごりは咲き垂れし秋海棠の下ながれ過ぐ 【『左千夫歌集』】
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NO.556
垂乳根の母が釣りたる青蚊帳をすがしといねつたるみたれども 【『長塚節歌集』】
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NO.557
つと入れば胸おしろいに肌ぬぎし君ありわれに住ねと云ひける 【『酒ほがひ』】
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NO.558
病める児はハモニカを吹き夜に入りぬもろこし畑の黄なる月の出【『桐の花』】
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NO.559
たはむれに母を背負ひて そのあまりの軽きに 泣きて三歩あゆまず【『一握りの砂』】
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NO.560
よこ抱きに乳をのませつつものをとる 茶の間の秋の 妻の顔かな【『黄昏に』】
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NO.561
我が母よ死にたまひゆく我が母よ我を生まし乳足らひし母よ【『赤光』】
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NO.562
椿の蔭をんな音なく束ねけり 白き布団を乾しにけるかも【『切火』】
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NO.563
外風呂に湯あみし居れば月読は山の端いでてわれを照らせり【『川のほとり』】
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NO.564
身はすでに私ならずとおもひつつ涙おちたりまさに愛しく【『林泉集』】